Small Talks

料理上手をさがせ!


サンダーバードの中で料理上手といったら当然、おばあちゃんとキラノ。
この双璧は崩せません。次点でティンティン。
…という常識(?)の範囲は置いといて、今回、考えてみたいのはトレーシー島の
その他の住人です。残った人々、ジェフ、兄弟達、ブレインズ。
経歴を考えると、それぞれ一人暮らしをしていたであろうと思われる時期があるので、
少なくとも全く自炊能力がない人物はいないでしょう。

で、今回、問題にしたいのはその能力のレベルと意欲の程度。


彼らの中で現状、一番、料理に縁遠いのは当然、ジェフ。
彼が実家を巣立つまでの成長過程でどのような家庭環境でそだったかはわかりませんが、
その後の経歴を考えると、少なくともそれなりに自炊をはしたこともあったでしょう。
でも結婚し、多忙な実業家となった時点で、どんどん料理から遠退いていったはずです。
そして現在、彼はコーヒー一杯ですら言えば出てくる身。
しかも美食ならいざ知らず、どう考えても作るほうに情熱があるとは思えません。
妻に先立たれ、かつては子供たちの朝食に数人分のオムレツを一度にさばいたことも
あったかもしれないその腕も、今は思いきり錆付いているにちがいありません。

というわけで、今、一番使い物にならないのがジェフ。
キッチンにいようものなら、ただ邪魔なだけ。


その点、スコットは弟たちの世話を通じて料理をしなければならない状況も多かったでしょうし、
その記憶もジェフよりは新しい分、格段にレベルが違います。
家庭的良き夫のイメージもありますし(見る人にもよりますが…)、能動的とはいかないまでも、
必要とあらばいつでも労を惜しまず料理に勤しんでくれるでしょう。
要領もいいですし、必要なことをそつなくこなします。
少なくともキッチンにいたらそれなりに役に立つはずです。
もし彼が結婚して妻が家事や育児に疲れたようなときには、
進んで休日の夕食作りをかってでるでしょう。

ただし、彼は長男。言うなればジェフの次に何もしなくていい身分です。
加えて、料理に関しては「やってもらえるならそれにこしたことはない」的雰囲気もあるので、
あくまでも、必要とあらば。


バージルはおそらくもっと自ら進んで料理をするのではないでしょうか。
彼は芸術家ですから、パーティ・メニューのデコレーションたっぷりの盛り付けなど、
それこそ腕の見せ所です。
「このお皿はこんな感じでいいかしら?」とティンティンあたりに尋ねられれば、
「この辺にもっと色がほしいな。ラディッシュはある?」くらいの返事は返ってくるでしょうし、
飾り切りの妙技も披露してくれるかもしれません。
きっと昔は目玉焼きにケチャップで顔を描いて、弟達を喜ばせていたことでしょう。

ただし、問題なのは料理は本来、日々の生活のために日に3回、365日必要な技能だということ。
彼の場合はおそらく興味の対象も味よりも見た目に寄りがちでしょうから、
方向性が少し特殊と言えそうです。


さて、ジョン。
彼は理系の学者なので、実験の再現性を確保することは基本中の基本です。
加えて真面目で几帳面な性格ですから、レシピと材料がそろえば、
ほぼ完璧な料理が出来上がってくるでしょう。
また、バージルの目的が最終結果のブラッシュアップにあったのに対して、
ジョンの興味はそこに至るまでの過程にあります。
小麦粉の入れ具合によるポタージュ・スープの粘性の変化、
素材と加熱方法の組み合わせによる塊肉への熱の浸透性。
素材に対して適切な手段と適切なパラメータを適用すれば、結果はおのずとついてくるわけです。

…そう、素材と手段とパラメータが揃っていれば。
冷蔵庫というものは大抵の場合、肝心なときに必要なものがなかったりします。
おまけにトレーシー島は孤島ですから、足りないものがあっても、
ちょっとそこのスーパーまで、というわけにはいきません。
そしてジョンは天文学者。
地道な観察と基礎研究が主である彼は、応用科学系の発明家とは対極にあります。

というわけで、前提条件が崩れたときに彼の料理がどのような結果に終わるのかは、
それこそ神のみぞ知る、といった具合でしょう。


その点、前の二人の兄たちに比べるとゴードンの料理に対する姿勢はもっと現実的です。
彼の釣りの趣味はスポーツ・フィッシングに傾倒している可能性もありますが、
食べられるものを釣って料理することもあったでしよう。
島に持って帰れば、あとはおばあちゃんかキラノがやってくれますが、
島以外に住んでいたときはクルーザーの上でその場でさばいて友人達とバーベキュー、
なんていうこともしていたかもしれません。
WASPにいたときはサバイバル訓練もあったでしょうし、そうなれば文字通り、
今そこにある材料で食べられるものを作れなければ、それこそ死活問題なわけです。

これぞ、正に人類がその歴史の中で求めてきた、本来、料理のあるべき姿。
だから彼は一つ二つ材料が足りなくても気にしません。
機会があればいつでも、快くキッチンに立ってくれるでしよう。
ただし、ありあわせの材料ですから、期待したものが出来上がってくるとはかぎりません。
代用品の選択を失敗して、見たことのないような代物がお皿にのっているかもしれません。

この場合ポイントなのは、けっして、多くを望まないこと。
『そこそこ』で我慢。それが大切。


アランは自らすすんで料理をしたがることはまずないでしょう。
多人数の兄弟の末っ子というのは、長男と同じくらい何もしなくていいポジションです。
加えてガールフレンドのティンティンは家庭環境や遺伝的側面から考えても、
まず間違いなく料理上手。
甘えん坊の末っ子気質なアランがわざわざ料理に勤しまねばならない理由はどこにもありません。
それにもかかわらずアランが料理をするとしたら、
うまくのせられたか、からかわれてムキになったか。
相手は前者ならティンティン、後者ならバージルかゴードンです。

で、肝心の料理ですが、できないとは言いませんが、
他者に比べるとアランは圧倒的に経験が足りません。
ですからアウトプットのレベルもその時々で天と地ほども違うでしょう。

要は焚き付けた本人がどこまで料理の工程を予測・コントロールできるか、
あるいは最終結果を受けとめる覚悟があるかです。


そして、正直なところ料理の腕が一番未知数なのがこの人、ブレインズ。
周知のとおり、彼は非常に研究熱心なので、
様々な方面から料理というものについて見識を深めようとするでしょう。
しかもアイディア・マンですから、色々な知識を組み合わせて、
折りに触れて新しい料理を生みだすこともします。
そして今頃は世界の料理界で旋風を巻き起こしているに違いありません。

…そう、これは彼の熱意が料理に向けられたとしたらのお話。
現実には彼の興味は料理とは程遠い所にあります。
加えて、今ホットなテーマがあるほど、他のことはどうでもよくなるのが研究者の傾向。

それなりに出来ますし、やれといわれればやりもしますが、
研究中のブレインズに敢えて料理を頼むのであれば、
少なくともレトルトか冷凍食品をチンですまされる可能性大であることは、覚えておきましょう。


というわけで、私の勝手な結論から言うと、
たまにスペシャル・ディッシュをオーダーするならジョン、
パーティー・メニューならバージル。
日々の三食をまかせるのであればゴードン。
スコットも日々三食系ですが、期限なしの義務とすると、熱意の継続性に問題がありそう、
といった具合です。

でも、案外、ジェフあたりが昔とった杵柄を披露しようと、
虎視眈眈と機会をうかがっていたりして。
所詮、表面から連想できるステレオタイプなんかには当てはまらないものなんですよね、
人間って。


…おっと、彼等はパペットだった…。

2005.11.13

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