Small Talks

もう一つのサンダーバード


唐突ですが、サンダーバードの新しい小説が出たのをご存知でしょうか。
2008年の6月に『Countdown To Action!』なるサンダーバードの小説が出版されました。
著者はJoan Marie Verbaさん、アメリカの作家です。
発行元のFTL Publicationsは、現在の放映権を持っているGranada Internationalと
正式に発行契約を結んでいるので、
Classicでは1968年の映画「サンダーバード6」以来の公式の新エピソードになります。


Countdown To Action! Countdown to Action!

by Joan Marie Verba (FTL Publications)
ISBN-10: 0965357570
ISBN-13: 978-0965357579


ちなみにこの本、日本のアマゾンでは売ってません。
(pomはこの件で初めて知ったのですが、同じアマゾンでも、日本とアメリカでは仕入れが全く異なるようで…)
米アマゾンで本体が値引きなしの$15.95、送料が$8.98、しめて$24.93。
A5ぐらいの大きさで1cmちょっとの厚みのペーパーバックにこの値段。
正直、高っけー!と思いましたが、でも待ち望んだ新しいお話、背に腹は代えられません。
というわけで、買って読みました。

お話は空軍時代のジェフがママを見染めるところから国際救助隊を始動させるところまでを描いています。
映像では語られなかったママの死、いま一つ希薄だったキラノ、ティンティンとの出会い、
誰がどうやってあの秘密基地を作ったか、
そしていかにして兄弟たちが国際救助隊に参加することになったのか。
公式の映像でミッシング・リンクだった部分を、丁寧に補完した内容になっています。


読み終えた感想は正直なところ、公式の新エピソードというよりも「よくできたファン・フィクション」でした。
一つ一つがきちんと説明されて、はあ、なるほど、そうきましたか!という具合に展開されていくのですが、
多分にオリジナルと見受けられる設定が多いので、
おそらくグラナダも、これを正式としたわけではないけれど、
まあ出してもいいよ、アメリカでの話だし…的な感覚だったのではないでしょうか。

本自体がジュブナイルなので、あまりドロドロした部分は描かれませんし、
ストーリーもご都合主義的なシーンが多々、あります。
主役はジェフですが、国際救助隊の様々な背景を説明するための
語り部になってしまっている感も否めません。


…でも、オイシイ部分もあるんですよ。

なにせ国際救助隊が始まる前の話ですから、メカなんぞ影も形もない。
当然、キャラクターが主役、その動向がお話の主眼。
おまけに筆者は女性。
40年前のJohn Theydonさんは「TBの主役ってトレーシー・ファミリーでしたよね…?」と問いただしたくなるほど
ペネロープ好きっぷりが際立っていたのですが、今回はしっかりファミリーにスポットをあててくれています。
エピソードの端々に兄弟たちに関する記述が出てきますが、
子供のころの彼らにジェフが旅先で買ったお土産から、
成長した彼らが乗っている車の種類まで、誰一人余すことなく、
丁寧に5人それぞれについて書いてくれているのも嬉しいところ。

しかも、驚いたことにこの人、ジョンが三男、スコットからアランまでの年の差が9歳という、
ほぼジョン・マリオット設定そのままを採用してくれています。ブラボー!
(だから公式っぽくないんですが…。^^;)


そして、特筆すべき点がもうひとつ。
おそらくこの作者、 ジョンに愛がある。

ジェフが主役なので、もちろんジョンが別段、活躍するわけではありませんが、
端々にどうも、あなた、ジョンがお気に入りじゃない?と思われる部分が見え隠れするのです。


このJoan Marie Verbaさん、2008年の11月にめでたく2巻目の『Action Alert』を出版されました。
今度の主役はスコット。
今回のお話ではジェフに物事を説明させるための質問係になってしまっていたので、
新刊での活躍に期待したいところです。
また2009年の6月か7月に『Deadly Danger』というタイトルでバージルの本を、
2009年末か2010年初頭にはジョンの本を出版予定だそうです。

お話はまあファン・フィクションレベル、確かに「…?」と思う部分もないではないけれど、
でも、これで息切れしないでほしい、どうかジョンが主役の本までは頑張って!と願わずにはいられません。



…さて、ここから今回の『Countdown To Action』のレビューを書こうと思いますが…

ネタばれ 超・注意!

あらすじどころか、話の落ちからどうでもいい瑣末な部分まで、
しかも脈絡なく私の気になった部分だけをバラしまくります。
これから読もう、ネタばれなんてとんでもないという方は、どうぞこの先はご遠慮ください。
それでもいいよ、下手なレビューでも読んでやろうかい、と思われる方は…

…本当にネタばれOKであれば → Go !

2009.1.27

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