シンデレラサマー by ゆきみ様 


「スコット、皆で海水浴に行かないか?」
「ジョン、君たちと一緒に海水浴に行きたいのはやまやまだけど、
今日もペネロープと約束があるんだ。また今度にしてくれないか?」
「そういうことならしょうがないな…気をつけて行ってらっしゃい…」
ここ数日、こんな具合でスコットはロンドン支部のペネロープ嬢と一緒に出かけることが
多くなった。ジョンは男性が女性をエスコートするのは当然のことだと理解していたものの、
心のどこかで
「スコットはペネロープのことが好きになったんじゃ…」
と一抹の不安を覚えていた。


釈然としない思いを抱いていたジョンをある日、バージルが買い物旅行に誘った。
「ジョン、今からゴードンやアランと一緒に本土へ買い物旅行へ行くんだけど、
一緒に行かないか?」
「買い物旅行に行くのだったら1人でもメンバーが多い方がいいよね。喜んで行くよ、バージル」
ジョンはバージルの誘いに快く応じると
「ジョン、ここ何年か水着を新調していないだろう?この際だから買い物ついでに
スコットの目を引くようなおニューの水着も買っちゃってさ、思い切ってスコットを
プールにでも海水浴にでも誘っちゃえよ!」
バージルのそばにいたゴードンが開口一番、ジョンに水着を新調するように勧めると
「そうだよジョン、大胆なデザインの水着を買ってスコットを誘惑すれば…」
アランもゴードンに同調してはしゃいだが、みなまで言い終わる前に
「アラン、少し言いすぎだぞ。…おっと、そろそろ出発しなくちゃならない時間だ。
みんな、出かけよう」
バージルにたしなめられ、そんなこんなでジョンはゴードンやアランとともに
バージルの操縦する自家用機に乗って本土へ旅立った。


メインの買い物を一通り済ませた後、4人はデパートの水着売り場へと向かい、
バージル、ゴードン、アランはジョンのために水着を見立ててやっていた。
そのうちにゴードンがジョンの制服のサッシュと同じ薄い紫色のラインが両サイドに入った
白い水着を見つけた。
「ねえジョン、これなんかどう?」
「うーん…そうだなあ。とりあえず試着してみるよ」
ジョンはゴードンの見つけた水着を持って試着室へ入って着替えてみると丈はひざより少し
上くらいだが、腰のラインがくっきりと分かる、競泳用のものに近いタイプの水着だった。
「何か恥ずかしいけど…似合ってるかな?」
恥ずかしげに弟たちにたずねるジョンだったが
「何言ってるんだい、ジョン。君がそんなコト言ったらイヤミになるよ」
アランが少々あきれ気味に言うと
「そうだよ!ジョンは元がいいんだからこれくらいの水着着たってバチは当たんないってば!」
ゴードンもまたジョンに彼が今試着している水着を懸命に勧めた。
「…新しい水着はそれで決まりだな、ジョン。さ、レジまで水着を持っていこうか」
ゴードンやアランにまくし立てられ反論の余地を失ったジョンにバージルがとどめを刺すように
言うとジョンは着替え直してから件の水着をレジへ持っていき、会計を済ませた。
「後は帰ってからスコットをプールなり海水浴なりに誘うだけだね。頑張れよジョン!」
弟3人の激励(?)を受けたジョンは顔を赤らめつつ今夜の宿のベッドで眠りに付いたのだった。


数日後、ジョンは再びスコットを海水浴に誘うべくスコットの部屋へ行こうとしたが、
廊下で偶然スコットに鉢合わせした。
「スコット…」
「ジョン、ちょうど良かった。君だけに話しておきたいことがあるんだ」
「僕だけに話しておきたいことって何だい、スコット?」
「ここではちょっと言いづらいから僕の部屋に来てくれないか?」
スコットはジョンを自室へ入れ、缶ジュースを冷蔵庫から出してジョンに勧めてから話を始めた。
「ジョン、この数日間ペネロープに付き合っていたのは彼女の従兄弟に当たる人が近く
社交界デビューを果たすことになって彼女はそのお祝いにタキシードをプレゼントしようと
思っていたんだ。だけど、肝心の従兄弟さんとはお互いの都合がつかなくてなかなか会うことが
できなくてね…。でも、従兄弟さんは僕と服のサイズが同じだということが判って従兄弟さんの
代わりに僕がタキシードの仕立てに協力していたんだ。もっと早く君に話しておけば良かったのに
今まで黙っていて本当に済まなかった、ジョン…」
「スコット…そういう事情があったんだね…。実を言うと君とペネロープのことを密かに疑って
いたんだ…僕の方こそ変に勘ぐったりしてごめん…」
スコットの話でジョンの心の中の漠然とした不安は一気に吹き飛び、ジョンはスコットに心から
謝罪した。そして、ちょっと間を置いた後ジョンは思い切って
「ところでスコット、今日はみんなで海水浴に行かないか?」
とスコットを海水浴に誘うと
「ああ、もちろん付き合うよ!兄弟みんなで海水浴なんてしばらく行っていなかったからね。
すぐ準備するよ」
スコットは即座にジョンの誘いに応じ、すでに水着に着替えて2人を待っていたバージル、
ゴードン、アランとともにトレーシーアイランドの浜辺へと向かった。


雲ひとつない澄み切った青い空の下、トレーシー5兄弟は海水浴を楽しんでいた。そんな中、
「ジョン、水着を新調したんだな。とてもよく似合っているよ」
スコットがジョンの新しい水着姿を目にしてジョンを褒めた。
「スコット、そう言ってもらえると嬉しいよ」
ジョンは照れに照れながらもスコットにまぶしいばかりの笑みを向けたのだった。




Feeling

SKY BLUE』のゆきみ様が、 こちらがお送りした超駄作に対して、
素晴らしいSSをプレゼントしてくださいました。

ジョンが皆に優しくされて、嬉しい…(感涙)
しかも、薄い紫色のラインが両サイドに入った白い水着を着たジョン、
腰のラインがくっきり…。もう、顔がゆるみっぱなしで… ^_^;
スコットの今回のロンドンでの任務(?)はタキシードのモデルだったんですね。
さぞかし、似合ったでしょうね。
遠巻きに見守る女性店員をよそに、スコットに色々なデザインをとっかえひっかえ着せながら、
満足げに微笑むペネロープが目に浮かびます。

ゆきみ様、素晴らしいSSをありがとうございました。


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